1.やはり「邪道だ」・・・マイナンバーカードの導入
河野太郎デジタル相が認めるように、現在のマイナンバーカードの導入のやり方は「邪道」だ。
それは健康保険証廃止にあたっての「資格確認書」の取り扱いに顕著に現れているように思う。以下では、この観点から、マイナンバーカードの導入の問題点について考えてみたい。
2.現時点での「資格確認書」の現状
政府は、マイナンバーカードを取得しない人、マイナンバーカードを取得しても健康保険証と紐付けしないと人、あるいは紛失した人に「資格確認書」を発行する方針だが、その資格確認書の取り扱いを巡って、マスコミ報道によれば、以下の方向が見えてきた。
- 有料化する話はなくなったようだ。
- 資格確認書は「1年間の期限」付き、しかもその都度「更新申請」しなければならない。
- 「受診機関で毎回提示」
3.マイナンバーカードの不合理性
(1)政府にもマイナンバーカード社会のあり方が描ききれていない
将来、デジタル化が一層進展し、デジタル化が避け得ないものであることに異論がない。だが、マイナンバーカードが来たるデジタル社会でどう使用されるのか(あるいはどんな目的、機能をもたせる)かを何ら説明していない。
政府が具体化したのは、健康保険証の代替、公金受取口座の登録(プラス「マイナポイント」)だけだ。議論に登っていたはずの運転免許証の代替の話は、今全く聞こえてこない。最近聞こえてきたのは自動販売機での「年齢認証」機能だけだ。
一言でいえば、健康保険証や運転免許証の代替を除けば、世の中で「どうでも良い、些末的なこと」だけだ。この程度のためにわざわざマイナンバーカードを取得しろというのは無理な話ではないか?
ここにポイントという飴玉をつけて、「取得すると、ポイントがもらえます」というのは、非常に馬鹿にした話だ。
こんなことではなく、マイナンバーカードの利便性、デジタル社会での位置づけをもっと真正面から提示されなければならない。
(2)詐欺的マイナポイント
あるマスコミのインタビューで「どうせ取得するならポイントがもらえる時期に」と、駆け込み申請で市町村の窓口が混んでいる様子が報道された。
せいぜい「ポイントもらえるうちに」程度の認識で、申請するのが大方なのではなかろうか。政府はこのことを重く受け取るべきだ。昨今何かと「ポイント付与」というやり方が流行しているが、今後の諸政策推進ににどれだけマイナスになるかを真剣に考えてほしい。
他方で。マイナポイントは、「カード取得」だけではつかず、「健康保険証」と紐付けして初めて7500ポイント、公金受取口座の登録で7500ポイント、そして「決済サービスの利用額に応じた」(最高で5000)ポイントとなっている。最後の「利用額に応じた満額の20000ポイント」には、20000円の利用が必要になる。結果20000ポイント取得に、20000円を支出しなければならないということになり、1銭も懐には残らないという勘定になる。
ご褒美ではなく、「狐につままれた話」ではないか!
(3)デジタル社会への「移行期」にはもっと丁寧さが必要
政府はマイナンバーカードをスタートに「デジタル社会」への移行を目指しているのだろうが、現在はその「移行期」にある。だから提案する側も、それを受けた国民側も制度理解が不十分なのはやむを得ないのかもしれない。しかしだからこそ、その移行にも「もっと丁寧な進め方」が必要なのだ。
話を「健康保険資格確認書」に戻そう。
マイナンバーカードの取得自体にそれ相当の困難な状況があることについては、すでに投稿しているので参考にしてほしい。
▶ 窓口での負担について
健康保険証と紐付けられたマイナンバーカードの利用について考えてみよう。負担させるべきではない。
受診者が医療機関で受診しようとすれば、医療機関の窓口にマイナンバーカードと診察券を出すことになる。今の紙の保険証でもマイナンバーカードに変わっても2種類の提示が必要なのだ。せめて「マイ ナンバーカードにすれば、診察券まで不要になりますよ」ぐらいの思い切った簡略化、負担軽減をすべきなのだ。
医療機関にとっても、カルテと紐付いたものが必ず必要で、マイナンバーカードが保険証だけでなく診察券にも置き換われば簡便になるのではないか。(それには設備設置費用などの問題も発生するが、政府で「デジタル社会」への移行経費(デジタル投資)として考えるべきなのだ。決して国民側に負担させるべきではない。)。
▶ 資格確認書の「申請」と「窓口での毎回確認」について
「資格確認書」について。厚労省の担当者は「基本的に必要な人が必要な時に申請するもの。自動更新していくかはそれも踏まえて検討する」と話しているというが、こんな考えはもってのほかだ。
誰得?マイナ保険証ない人向け「資格確認書」 本人申請が必須で有効期限は最長1年、自動更新は未定
現行の健康保険法上は、保険の運営者(または事業主)に「保険証の交付」を義務化している(同施行規則第47条)。それは健康的で文化的な最低限度の生活を保証された国民の権利(憲法第25条第1項)に対応したものだ。
にもかかわらず、保険証の交付を「申請主義」に変更することは、「改悪」に他ならないし、国民の権利を侵害するものだ。そこまで言わないまでも、「人間一生に一度は誰でも大病する」「だからみんなで支え合おう」という相互扶助の下、皆保険制度を設け、保険料の支払いを義務付けているのだ。だから「保険証の交付」するのは当然のことだろう。それを「必要な人が必要なときに」との発言は、この大前提を覆す。むしろマイナンバーカードこそ「必要な人が必要なときに」申請すればよいものだとも言える。
医療機関の窓口での混乱については、マイナ保険証、受診時に「毎回提示」 厚労省見解 初診時や月1回の確認だけでよかったのに…を参照してほしい。そこには、少しでも事務処理をスムーズに、そして少しでも受診者の負担を軽くしたいという医療現場の努力が払われているのだ。
4.結論
今のマイナンバーカードの進め方は、デジタル社会への丁寧な取り扱いを飛ばして一気に「エイヤー」とばかりに進めるものだ。今一度現状を猛省し、改善を望むものである。
ピンバック: マイナーカード名称変更問題は、今発生している問題のすり替えではないか? – 辛口.Net