1.クレジットカード利用額の分割払い
あるクレジット会社より「分割払いの勧め」のDMが届いた。
内容(概要)は以下の通り。
(1)支払いを分割払いにするとこんなメリットが書いてある
- 今月の支払いをスキップでき、翌月からの支払いで、出費に備えて手元にお金を残しておくことができる。
- 好きな利用分だけ分割払いにすることによって、今月の支払いを減らすことができる。
- ウェブサイトや電話で簡単にできる。
(2)分割払いを利用した場合の支払い例が書かれていた
例えば、総額80000円のうち、50000円だけを3分割払い、残りの利用は1回払とすると、
利用額 | 80,000 | |||
分割額 | 30,000 | (※ 1)50,000 | 手数料 | 月々の支払額計 |
5/29 | 30,000 | 30,000 | ||
6/27 | 16,668 | 340 | (※ 2)17,008 | |
7/27 | 16,666 | 340 | 17,006 | |
8/28 | 16,666 | 340 | 17,006 | |
支払額合計 | 30,000 | 50,000 | 1,020 | 81,020 |
※ 1 利用明細ごとの変更であり、金額を指定した変更は不可。
※ 2 1回あたりの支払いが金額が1000円以上となる分割払いが可能。
※ 3 元金と手数料の内訳は概算。
2.分割払い手数料はあまりにも高い(分割払いのバカバカしさ)
この手数料が高いと考えるか、安いと考えるかは、利用者の所得階層によることなるのだろうが、少なくとも預金した場合の利子と比較して馬鹿高いことは事実だ。
現在、主要銀行の預金利子は0.002%。50,000円3ヶ月支払せずにこれを預金としたとして、その利息は50,000 x 0.0005%(0.002% の4分の1)= 0.25 円。1円にもならないのだ。にもかかわらず、分割手数料は1,000円を超える。単純計算で、なんと4,000倍もの収入を手にするのだ。
仮に、銀行は預金を他への融資に利用でき、例えばこの50,000円をマイカーローンなどに利用させると、125円〜250円の利子を付けることができるが、分割払いによってこのローンへの原資が入ってこなくなるのでこれを損失額となる。
この損失額と比較しても分割払い手数料は、500倍〜1,000倍に当たる。
※ マイカーローンの利子は各行、各ユーザによって異なるが、中間値と思われる1% 〜2%(の3ヶ月分)で算出。またマイカーローンは10万円以上とされているので、5万円を直接融資と比較できないが、顧客二人分を合わせるとこれが可能になってくるので、それを各人に割り当てた融資利息と考えてほしい。
結果的に、銀行は分割手数料を利用させることによって、融資の旨味(500 倍〜1,000倍)を失うが、同時に4,000倍もの旨味を手に入れられるのだ。
3.翌月からの家計がそんなに改善するのだろうか
分割払いのメリットの一つにあげられている「当月は現金を手元に残しておける」さえも、現実的ではない。
下表は、翌6月にも同額を分割払いした場合の支払額を想定したものだ。
利用額 | 80,000 | |||
分割額 | 30,000 | 50,000 | (※ 1)手数料 | 月々の支払額計 |
5/29 | 30,000 | 30,000 | ||
6/27 | 30,000 | 16,668 | 340 | 17,008 |
7/27 | 33,334 | 680 | 34,014 | |
8/28 | 33,332 | 680 | 34,012 | |
9/ ? | 16,666 | 340 | 17,006 | |
支払額合計 | 60,000 | 100,000 | 2,040 | 162,040 |
※ 1 分割払いの手数料が2口になった場合は、単純に2口として計算。
8万円のうち、種々の理由から「当月は現金を手元に」残す必要に迫られて、分割払いを利用したのだろうが、そのような家計状況にあるのに、7月や8月に35,000円弱の金額が支払い可能になるだろうか?大いに疑問である。
つまり、一時的な5万円の支払い猶予と引き換えに、35,000円の支払いをしなければならなくなるのだが、これに耐えられる家計なら最初から分割払いなど利用しないのではないだろうか。
4.結論
こうやって見ると、分割払いは、家計があまり良くない状況にあるところ(大変失礼だが)から、莫大な手数料を稼ぐものである。利用者はよくよく家計と相談すべきだし、「血液を送り込む心臓の役割」としての金融機関の役割が、「搾り取る」ことに比重が置かれすぎていないだろうか?と思わざるを得ない。
これが日銀のマイナス金利政策のツケだと思うと、日本は常に弱者には厳しい政策しか採用しない、政策的に貧しい国の1つなのかもしれない。