この問題については、「4病院再編をめぐる村井発言と行動は一方的な公約解釈と姑息な進め方に映る。医療サービス行政の原点に戻った行動を!」で、これまでの経過、その問題点、あるべき議論の進め方について触れた。
1.4病院再編で「新たな分院」構想を発表
村井県知事は、現在開会している宮城県議会に、新たな提案を突然発表した。また宮城県と病院との基本合意について、「締結後に議会に諮る」が、それに対しては県議会には賛否の権利を有しており、「基本合意の内容に議会が縛られることはない」ことを明らかにした
2.新たな提案には少しの改善も認められない
この分院化構想の提案については、県民の移転懸念に一定配慮したものだろうが、そこには「二転三転」との印象が拭いきれないし、そもそも病院の適正配置をどう考えているのか?
仙台市内では、人口減少で病院の経営が困難だなんて結果論ではなく、県民が安心して生活するための医療行政はどうあるべきなのかその説明がまだなされていない。仮に利用者が十分にあるにも関わらず病院経営が成り立たないとすれば、現在の保険診療のあり方の問題かもしれない。
そのような疑念を払拭できるだけの医療行政の「あり方」論が落ちている。これが出てこない限り、どこまでも疑念や矛盾の塊を提案しているに過ぎなくなってしまう。
3.県議会の関わり方について
(1)基本合意締結後では、県議会に「賛否」の権利など残されていないのではないか?
また。病院との「基本合意」締結後に県議会に図られることが明言されたが、どうもピンとこない。「諮る」となれば「議案」になるということだろうし、それで初めて議会側が「賛否」の議決ができるということだ。
基本合意を締結した宮城県には、基本合意に沿った「条例」案なり「予算」案が提出されることだろう。
問題は、これら議案に「賛否」の議決権が県議会に本当に残されているだろうか?という点だ。
仮にこれらをすべて否決すれば、病院側は、基本合意の遵守ができなかった宮城県に、「基本合意の債務不履行を理由にした損害賠償請求権」を持つことになるだろう。
そうなると、議会には「基本合意に」に沿った条例なり、予算案に賛成するか、「損害賠償請求権」の履行のための予算案に賛成するかの二者択一を迫られることになる。
だから現況は、「否決することは自由だけど、その後始末も考えてね」と村井知事が議会に迫っていることになり、議会に「賛否」の議決権など残されていないと言わざるを得ない。
(2)富谷市の動きは、村井知事の発言がいかに「不自然」かを物語っている
移転候補地の一つである富谷市長は、病移転の候補地を約14億円で取得する予定だという。
富谷市は、「基本合意が交わされてから費用を計上する予定でしたが、議論がまとまっておらず、このままだと土地を所有する土地区画整理組合に損失を与えかねないとして計上に踏み切った」としている。審議の結果はまだでていないようだが・・。
この動きは、「すでに決定している」ことに対して県議会(市議会)が「賛否」の議決をすることがいかに困難かを物語っているもので、村井知事がいう「賛否」の権利が県議会に残されているという発言ほど、簡単なことではないことの証左である。