日本学術会議の任命拒否問題を考える

投稿者: | 10月 18, 2020

標記問題についてはあらゆるところで評論が発表されており、しかも現在も進行形の状況と思われる。だから事の成り行きを見なければ真相が明らかにならない面が有るが、今現在においてはっきりしていることについて、考えてみたい。

なお、その他にも問題を含んでいると考えるが、それは追々。

【注】以下の菅総理の表明部分は、https://www.tokyo-np.co.jp/article/59886から引用している。

「任命拒否」問題の問題点

現在はっきりしていることは、第1に、政府が従来の国会答弁とも異なることを唐突に行ったこと、第2に、拒否の理由が明確でないにもかかわらずそれを明らかにしようとしないことだ。

任命拒否の唐突性

第1の問題点について、菅総理は「過去の国会答弁は承知しているが、それぞれの時代の制度の中で、法律に基づいて任命を行っている」と表明している。

総理自ら取り扱いの変更を自認しているわけだが、この取り扱いの変更を「任命権者」の判断だけで行ったことが問題なのだ。

「見直し」「変更」自体があってはならないということを申し上げているのではない。国会答弁は国民の代表たる国会に「行政の考え方」「行政のやり方」を約束するものだが、今回の拒否問題はこの約束を一方的に反故にするものなのだ。

国会答弁が「任命権者」の一判断で反故にされたことが問題なのだ。「国会軽視」「国民無視」と評価されたも仕方のないことなのだ。

拒否理由の不明朗さ

第2に問題について、菅総理は「法に基づいて、内閣法制局にも確認の上、学術会議の推薦者の中から首相として任命している。個別の人事に関するコメントは差し控えたい」
 「会議は政府の機関で、年間約10億円の予算を使って活動し、任命される会員は公務員の立場になる。現在の会員が自分の後任を指名することも可能。推薦された方をそのまま任命してきた前例を踏襲してよいのか考えてきた。会議は、省庁再編の際に必要性を含めて相当議論が行われ、総合的、俯瞰的な活動を求めることになった。総合的、俯瞰的な活動を確保する観点から、今回の任命についても判断した」と表明しているようだ。

この中から、拒否の理由らしいものを拾ってみると以下の4点くらいだろう。

  • 「法に基づいて」「首相として」任命している
  • 年間10億円の予算等の問題
  • 「前例踏襲」型への疑問
  • 総合的・俯瞰的な活動を求めた結果だ

この中でも理由らしきものは「予算」と「(学術会議に)総合的・俯瞰的な活動を求めた」だ。

「前例踏襲型」への疑問や「法に基づいて」「首相として任命している」などとは理由にならない。なぜなら疑問があっても唐突型判断に問題が有ることは前述のとおりであるし、法に基づいて任命したなどというのは拒否の理由を全く示していないからだ。

残る「予算」や「(学術会議に)総合的・俯瞰的な活動を求めた」などは、内実に触れるものとして前記2つの理由よりマシだ。

しかし、この2点でもこの拒否問題を説明できない。なぜなら予算は国会審議を経て議論されるべきだし、「総合的・俯瞰的な活動」が何を意味するかを未だに明らかにしようとしていないからだ。少なくとも「総合的・俯瞰的な活動」が何を意味し、今の学術会議にはこの点が不足しているからだといった点までは明らかにされるべきであろう。

菅総理の真の狙いは?

菅政権になって少しはましになったかなと思ったが、「あ、やっぱり安倍政権を引き継いだ」んだとの思いを強くしていることろだ。

本当のところ「首相として」というところが本音で、私が一国の首相、その私が決定したことだから、周りは黙って見ていろ、という雰囲気が醸し出されているように感じてならない。

某TV局のドラマに出てきた白井国土交通大臣の言葉が思い出される。「私は国交大臣。現場はネジと同じ。その指示に忠実に従えばよい。」

日本学術会議の任命拒否問題を考える」への1件のフィードバック

  1. ピンバック: もうヤメようではないか!安倍流政治(自民党総裁選に関して) – 辛口.Net

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