原子力規制委員会の多数決は非科学的だ
2023年2月15日追記
政府・経産省はついに原発の60年超運転を自分の懐に入れてしまった。
原子力規制委員会は、13日夜、委員会を開き、原発の60年超運転の経産省に許す「改悪」条文を多数決により了承した。
少なくとも、「(現行の原子炉等規制法について)規制委が守るべき法律だ。われわれとして積極的に変えにいく必要はない」「より経年化(老朽化)した炉を将来動かすことになる」「科学的、技術的な新知見に基づくものではない」「運転期間の制限を法律から落とすのは、安全側への改変とは言えない」など、石綿氏のこれまでの発言のほうに説得力がある。
特に審査に時間を要した(すなわち古くなったもの)ほど長く運転できるとする今回の改悪は、非科学的以外の何物でもない。
明らかな政治的配慮(「締め切りを守らないといけないとせかされて議論してきた。規制委は独立した機関であり、われわれのなかでじっくり議論すべきだった」との杉山智之委員発言)により、もしや原発事故が?と頭をよぎる。
これまでの経過
政府は1月22日、脱炭素社会の実現に向けた基本方針を決定した。その内容は2点。
- 原発運転期間をの60年プラス運転停止期間に変更する
- 次世代型原発への建て替え
原発政策大転換 60年超運転、建て替え推進の基本方針を決定 議論わずか5カ月 事故の教訓から目を背け
このうち、2点目の「次世代型原発への建て替え」については、日本のエネルギー政策として将来どうすべきなのかという観点から決定されるべき事項なので、経産省の所管だということだろう、
ここでは、原発が、脱炭素社会を解決する唯一の方法でないばかりか、原発が積み残してきた「負の遺産」をどうするのか?岸田首相が得意の「今を生きる我々の責任」ではないのかとだけ申し上げる。
問題は、第1点目の「原発運転の延長」を経産省が言い出したことを、私はお門違いではないのかと申し上げたい。
この決定は、東電福島原発事故の際、「エネルギー政策を推進する」側と「安全性を確保する」側が一緒ではだめだ、「過信」が生まれ安全性は確保できないという反省から、「原子力規制委員会」「原子力規制庁」が「環境省」に発足した経緯を度外視した政策提言だからだ。
発足の経緯を振り返ると
2011年(平成23年)3月11日に東京電力福島第一原子力発電所で発生した福島第一原子力発電所事故は、原子力発電を推進する「資源エネルギー庁」と規制する「原子力安全・保安院」が同じ経済産業省の中にあるため、同じ官僚が省内の異動によって、推進と規制を往復する人事交流が漫然と行われ、規制対象である電力会社に天下りした退職者が規制行政に公然と干渉するなど、規制機関が監査機能の役割を果たしていなかったことが、原因の一つと考えられた。
この反省に基づき、環境省に新たに外局として、原子力規制に関わる部署を設け、原子力安全・保安院と内閣府原子力安全委員会等、原子炉施設等の規制・監視に関わる部署をまとめて移管することが検討された。
議論の過程では内閣府の下に規制機関を新設する案や、より独立性の高い国家行政組織法3条に基づく委員会(行政委員会、三条委員会)とする案なども検討されたが、環境省の外局として「原子力安全庁」を新設する案が採用された。
原子力規制委員会
原発も機械施設である以上、運転を停止している間も経年劣化が進むことは自明だ。だから運転期間の延長は単純な「エネルギー政策」の問題ではなのだ。
もしや、政府・経産省も経年劣化が進み、あの悲惨な結果を招いた反省を忘れてしまった、では済まないのだ。