NHKオンラインのHPに「東日本大震災8年被災者アンケート」が掲載されている。
設問は、以下の6項目を主としている。
- 今の住まいに移る前の仮設住宅や避難所に比べて、交流頻度は減ったか?
- 震災の心身への影響は今でもあるか?
- 2年を残している復興・創生期間に、計画通り復興は進むと思うか?
- 震災を、学校教育の中でどのように教えていくべきか?
- 東日本大震災の教訓は、他の災害に生かされたか?
- 復興五輪を標榜する2020年東京オリンピック・パラリンピックは、復興を後押しすると思うか?
アンケート結果は、「復興半ば」という印象を受けるものになったし、オリンピックにしてもこの時期では「迷惑五輪」とも言うべきものだと感じている被災者が比較的多いことを示した。この結果に、兵庫県立大学木村玲欧 准教授は次のように結んだ。
「東日本大震災から8年、大きな被害を受けた被災者の現実は、今も厳しいものでした。震災後と比較しても収入が更に減り、食費や光熱費、レジャー費を節約する現実。震災による心身の影響が残り、住まいを移したことで近所づきあいも減る現実。震災が風化しながらも、まだ教訓が生かされていないと感じる現実です。
被災地では、今後、「生活再建」ができる人と、なかなかできない人の二極化が進むと考えられます。阪神・淡路大震災でもそうでしたが、1人1人のニーズに対応した「きめ細やかな支援」と、私たちの「忘れずに見守る」という気持ちが、一層求められると思われます」
さて、昨日、政府主催の「追悼式典」が開催された。安倍総理が政府を代表して式辞を述べているので、アンケートに関連する次の2点を中心にまとめた。
(1)復興状況に対する認識について
「生活に密着したインフラの復旧はおおむね終了し、住まいの再建も今年度末でおおむね完了する見込」「(福島の被災地においても)ほとんどの地域で避難指示が解除され、本格的な復興・再生に向けて生活環境の整備が進むとともに、帰還困難区域においても特定復興再生拠点の整備が始まり、避難指示の解除に向けた取組が動き出しています」とし、「被災地の復興は、着実に前進」としている。
(2)今後について
一方で未だ1万4千人が仮設住宅での生活を強いられている(※)状況に触れ、「今後も、被災者お一人お一人が置かれた状況に寄り添いながら、」「生活再建のステージに応じた切れ目のない支援を行い、復興を加速してまいります。」「震災による大きな犠牲の下に得られた貴重な教訓」を風化させず、「3年間集中で、・・国土強靭化をすすめていく」
※
避難者の総数は、先月末時点で、51,778人(復興庁まとめ)
安倍総理の1万4千人は、応急仮設住宅とそれ以外の賃貸住宅に避難している者のうち、東北地方に避難している者の13,878人を指すと見られる。しかしどうしてこんな小さな数字で避難者の数を代表させたのだろうか。意図的に小さく見せるためではなかったのか。
第1点の復興状況に対する認識は、果たして先の被災者の認識と一緒であろうか?
交通インフラや公共施設の整備で復興の実感を感じる方が5割ほどに上っているものの、地域経済や地域交流は4割にも満たない。政府にはまだまだやるべきことが残っており、それが復興・創生期間内に「(復興が)計画通りに進まないとする」65%もの意見ににつながっていると思われる。
「住まいは再建したけど・・・」の記事が注目される。
今後の対応について、安倍総理の述べた一般論には異論がない。でも、現実はそうなっていないのではないかと指摘したい。
実は、こんな現実がある。「被災者のサイレントマジョリティー在宅被災者の苦悩」である。政府が自慢するハードの復興ですら、その対策の外に置かれているものがいる。
また、教訓が生かされていないとの先のアンケート結果を見てほしい。国土強靭化策なるものの具体化が不十分だが、災害発生を防止するハードの整備だけを意味するものであるならば、政府も教訓から学んでいないと考えざるを得ない。
「忘れたか!世界一の防潮堤。原発の安全神話」
どんなことをしても防ぎきれない自然の脅威があることを教えてくれたのが、東日本大震災だ。発生は防げないのである。
だから、避難、救助、復旧が重要なのだ。でも、未だに原発にしがみついているし、避難、救助、復旧でも災害の度に同じ手法が使われ、災害の度に起こっている課題の解決は先送りされたままではないか。一過性の風邪のごとく、忘れ去られるのであろう。