次期総裁は誰か?が急速に浮上してきた。直接の発端は菅前総理の「岸総裁は(裏金事件の)責任をとっていない」という発言と、これに呼応したような河野デジタル相の動きだ。でも、それって(裏金)事件をめぐる自民党の自浄能力欠如を示しており、自民党の恥さらしではないかと思う。
1.これまでの経過(ごくごく簡単に)
政治資金の不記載(裏金)事件が発覚したのはは昨年の冬だ。それまでにも自民党の金の使い方に問題があったのは自明で、裁判沙汰にもなった。これらの問題はすでに指摘してきた。
それから今回の規制法案が成立するまで6ヶ月。この間自民党内で出してきた法案は、全て「金権体質をできるだけ温存しようとした努力の賜物」と思われるほど、骨抜き法案だった。パーティ券の購入公開は「10万円超」、政策活動費に至っては「政党が収支報告書に記入」を柱とするもの。
しかし、各地の補選で自民党推薦の候補者の落選がはっきりし、また各種世論調査でも「評価しない」が多数という結果が出てくると、各野党の批判に加え、政権与党の公明党までもがこの法案にケチをつけはじめたので、一旦は「自民党単独での提出」にならざるを得なかった。
でも、参院で単独過半数を締めていない自民党単独法案は成立する見込みはなく、それでも単独提出に踏み切ったのは「自民党は改革の姿勢を示した」というアドバルーンでしかない。もしくは審議の途中で「(自民党法案に)折れてくれるだろう」という目論見があったのかもしれない。
その後は、公明党や各野党の追求に対する岸現総理の「英断」「強いリーダシップ」あるいは「先走った答弁」により、自民党法案は修正を余儀なくされ、結果的に「難産の法案」になって5月16日与党の賛成多数により成立した。成立した規制法案は当初の自民党案からかなり修正されている。が、それが「ザル法案」であることは各種マスメディアの指摘のとおりである。
2.経過を振り返ると見える「自民党の自浄能力の欠如」
岸現総理は法案成立後の記者会見で「一連の事案を受け、再発防止や透明性向上という観点から、実効性のある制度になった」と述べたという。この発言は、裏返すと「あまり厳しくしても守れないよ」と言っているのだ。すなわち政治資金規制は、今の自民党の自浄能力の限界を示した法案だということだ。
だから、自民党内での処分時期には沈黙していたはずだが、菅前総理が此の期に及んで「岸総裁の責任」論を振りかざすのは、「自民党の自浄能力の限界」という本質を隠した、重箱の隅の批判だ。更に一歩進んで、菅前総理の狙いは、この重箱の隅の批判で、金権体質の嵐に終止符を打ちたいということの表れか?
いろいろな見方ができると思うが、本質をすり替える発言には気をつけようではないか。
3.この動きの中で気になった点
(1)個人の収入にしたのは「背任」または「業務上横領」罪では?税務上の処理に問題はないのか??
刑法にあまり詳しくない身としては、不確かなのだが、党支部への還元金は、「党支部」のものであって、議員個人の収入ではないはず。だとすれば、これを自分の収入(自分のお金)にすることは背任または業務上横領罪に触れるのでないか。該当のニュースでは「派閥からキックバックを受けた資金」とだけ記載され、そもそも党中央からどこに流れたのかが明確ではない。仮にそのように議員個人に流れたと見るのが正当なのであれば、パーティ資金は党中央の収入であり、議員個人へのキックバックは、この収入の私物化を意味し、党中央の誰かに業務上横領もしくは背任罪が成立するのでは・・・???
また税務上の処理も適正なのか?
謎だらけ。
(2)「政治活動の自由」について
岸総理は、時々「政治活動の自由を確保しながら・・・」という発言をする。この発言が「政治活動の自由は裏金がないと成立しない」ということを意味するものだとすれば、「なぜ?」となる。
そもそも国政は「国民の厳粛な信託」によるもので、(日本国憲法前文)、「全国民の代表」によっておこなわれる(同法第43条)。だから国政に携わる国会議員は全ての行動、すべての政治資金の流れなどをすべて一般公開すべきなのだ。
国会議員にも一私人としての行動は保障されるが、国民の税金はもとより国民からの寄付などを使用してはならない。「自分のお金」でやるべきです。
政治活動は国民の厳粛な信託によるものだから。
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