1.日本政府は米の核戦略見直しを歓迎
日本政府は、トランプ政権が発表した「核戦略見直し(NPR)」に対して「高く評価する」一方で、「現実的かつ具体的な核軍縮の推進に向け、米国と緊密に連携していく」との政府談話を発表したとされる。
政府は3日、トランプ米政権が「核なき世界」を掲げたオバマ前政権の方針を転換する「核戦略見直し」(NPR)を公表したことを「高く評価する」と歓迎する河野太郎外相談話を発表した。日本が唯一の被爆国として核廃絶を唱える一方で、米国の「核の傘」に依存している実態を浮き彫りにした格好だ。
政府は談話のなかで、北朝鮮による核ミサイル開発に触れ、「安全保障環境が急速に悪化している」と指摘。新戦略について「米国による抑止力の実効性の確保と我が国を含む同盟国に対する拡大抑止へのコミットメントを明確にしている」と評価した。
さらに米国が新戦略で「核・生物・化学兵器の究極的廃絶に向けた自らの取り組みに継続的にコミットする」と言及したことと「核兵器不拡散条約(NPT)体制の強化と核兵器の更なる削減を可能とする安全保障環境を追求する」と表明した点に注目。日本政府として、「現実的かつ具体的な核軍縮の推進に向け、米国と緊密に協力していく」との考えを改めて示した。
https://www.asahi.com/articles/ASL234TC2L23UTFK003.html
2.少しも「現実的かつ具体的な核軍縮」ではない。むしろ核軍縮は口先だけ。
以前、核の傘に入って核軍縮はできない、むしろ核拡大路線になるという危険を指摘したが、いよいよそれが露呈した。その点は、次の日経新聞 2月6日付 社説にも現れている。
米国のトランプ政権が核戦略の指針となる「核体制の見直し(NPR)」を発表した。核兵器の使用条件の緩和など、核の役割を拡大する路線を鮮明にした。米国や同盟国の核抑止力を高める狙いがあるとはいえ、世界の核軍縮に逆行しかねず、懸念を拭えない。
「核兵器なき世界」を唱えたオバマ前政権が2010年に策定したものを大幅に修正した。
とくに核の使用は「極限の状況」に限るとしつつも、通常兵器など核以外の攻撃への反撃にも使う可能性を明記した。局地的な戦闘を想定して爆発力を抑えた小型の核弾頭を開発し、潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)に使用する方針も打ち出している。
こうした措置は「21世紀の様々な脅威」に柔軟に対処するためだと説明。中でも核戦力の近代化や増強を進めるロシアや中国、核開発を続ける北朝鮮を批判した。
確かに、領土的な野心を隠さない中ロは「核大国」の地位を誇示して国際秩序を乱す恐れがある。核・ミサイルで国際社会を威嚇する北朝鮮も深刻な脅威だ。
世界の厳しい安全保障環境を踏まえれば、米国が一定の核抑止力を保持するのはやむを得ない。同盟国である米国の核の傘に守られる日本にとっても、国益に資する面があることは否定できない。
気がかりなのは米NPRが世界の核軍拡を招きかねないことだ。中ロは米国の新方針を批判しており、一段の核の近代化で対抗する公算が大きい。核使用の条件緩和や小型核弾頭の開発で「使える核」がより現実のものとなれば、北朝鮮のように核の野望を抱く国や組織をさらに増やしかねない。
そもそも核拡散防止条約(NPT)は、核兵器保有を米ロと英仏中の5カ国に限定する一方、核保有国に誠実に核軍縮交渉を実施するよう求めている。
だが、世界の核弾頭の9割以上を保有する米ロが11年に新戦略兵器削減条約(新START)を発効させて以降、核軍縮は遅々として進んでいない。それどころか米ロはソ連時代に締結した中距離核戦力(INF)廃棄条約に違反していると互いに非難し、同条約の存続すら危ぶまれている。
今回の米NPRは、核軍縮を怠った核保有国の不作為を映したともいえる。米ロや中国はいまこそ誠実な核軍縮に取り組むべきだ。そうでなければ、NPT体制はますます形骸化してしまう。